青花ナスタって何?—出会い
1996年,”Tropaeolum azureum” 別名”Blue nasturtium(青花ナスタチウム)”と言う,珍しいナスタをT&Mカタログで見つけました.青花というものの,カタログ写真によると,花びらの色は淡めの紫色,中央部が白いアクセントになっています.カタログでは,発芽にかかる日数が20~365日となっており,発芽させるのも難しければその後の栽培も難しい,というなかなかの難物のようです.お値段も14粒で7.99ポンドと高価ですが,一度本物の花を見てみたい…そう思ったのでした.
初めての種まき
初めて私が種まきにチャレンジしたのは1997年,ちょうど春の種まきシーズンでした.まず冷蔵庫で擬似的に冬を経験させる事からスタートです.種袋の裏の説明には,冷蔵庫で数週間寒さに当てよと書いてあります.そこで,ミニ・トマトの小さなパックにキルティング用の綿を敷き,そこに水分を含ませて種を置き,冷蔵庫で様子を観察する事にしました.発芽を確認したのは1ヶ月経つか経たないかの頃,種に裂け目が出来て白い物が見え始めたのです.「うわ,種に変化が現れた!」と興奮しながら,土に植え(埋め)替え,引き続き様子を見ていたのですが…あえなく枯れてしまったのでした.(T_T)
発芽への工夫
というわけで,発芽は何とか見れたもののその後が続きません.発芽させる事すら難しい青花ナスタ,これは何か対策を考えなくては…というわけで「冷蔵庫ではなく,自然の寒さに当ててみよう」と思いつきました.そこで,1998/01/28に7粒はプランター内に埋め込んだ素焼き鉢,(土は赤玉小粒とバーミキュライト半々) 2粒は先住人の植わっているプランターの株間に,それぞれ種まきしました.
約1カ月後,まるで1本の枯れ枝か雑草か?見分けがつかない姿で発芽しているのを発見,約1週間後にはTropaeolum属らしい葉の形になり,自然の寒さに当てて発芽させる方法は見事成功をおさめました.(^^)v
「暑さ」の壁は「厚い壁」
その後順調に生育していましたが,5月のある日,戸外に出して日光浴させていた1鉢が干からびてしまいました.これはいけないと思い,日射しの強さを避けるべくもう1鉢はずっと室内で栽培していました.が,1998年夏の異様な暑さのためだんだん葉の色が悪くなり,最後には干からびるように茶色く変色して,その一生を閉じてしまいました.大阪という,夏には亜熱帯に匹敵する気候となる場所での栽培はかなり難しそうだ,と感じたシーズンでした.
用土の工夫 —段ボール混入土
諦めきれない青花ナスタ,1999年も種まきからチャレンジです.この年の栽培ポイントは何と言っても「土」.今までの用土とはひと味違った「段ボール入り栽培用土」(ブレンドして下さった流花さんに感謝;土の内容は赤玉,ピートモス,牛糞堆肥,バーク堆肥,桐生砂,軽石,苦土石灰に,目玉として細かくカットされた段ボールが混ぜ込まれている)をほとんどの株に用いました.この土は非常に水はけが良いのが特徴です.
もともと「段ボール」を栽培用土に用いる手法は,ランや山野草栽培で行われていたそうで,気むずかしい植物でも比較的栽培がうまく行くという事らしいです.そのメカニズムについてはまだ解明されていないようですが,もしこれでアズレウムが大阪の灼熱の夏を無事過ごしてくれたら…と望みをかけています.段ボール栽培に関する各種資料をお送り下さったビギさんにも感謝します.
不思議な出来事 —イモ
さて,用土の工夫にもかかわらず,やはり5月~6月にかけて次々と株がダウン.(-_-;)それにしても,今年の青花ナスタはどうも成長が遅いぞ…と思っていたら,なんと人の目を盗んで知らぬ間に地中でイモを作っていたのです!(^^;
そこでハタと考えました.「イモ,食べてみようか….」ではなくて(^^;,「たとえ株は枯死しても,もしかしてイモを保存すれば,また発芽する可能性は無いのか?」と.イモの直径は1センチ内外なので,充分な大きさなのかどうかがわかりませんが,これまた実験材料が増えたと(少し)喜んでいます.まぁ,ものがイモだけに,「イモな結果」に終わらなきゃいいのですが.(^^;
原点に帰る —現地では?
今までの事を,あ~でもない,こ~でもないと考えていても進歩はありません.そこで,一度原点に帰りカタログを調べなおしてみました.T&Mのカタログには,「珍しいチリの品種」という記述があり,栽培適温は18℃~21℃,土質は中性~酸性,日当たりを好む….イモで越冬(越夏?)するというヒントはありません.(^^;
という事で,今シーズンは原産地チリの情報を収集しています.が,植物情報以外なら結構あるんですけど,植物情報は皆無に等しい現状です.(-_-;)
あるひらめき —秋まきへの挑戦
さて,11月下旬にふと青花ナスタのイモの事が気になり始めました.「イモが出来ていたけど,そろそろ涼しい季節.一番アンデスの気候に近い季節かしら?」と思うと,勝算はまるで無いものの,なんとなく水やりをする気になりました.素焼き鉢栽培で,例の段ボール入りスペシャル・ブレンド土を使っています.イモはそんなに深くには埋めず,せいぜい2センチまでぐらいの所に埋めておきました.
そして1999年12月半ば,ふと見ると「なんと!青花ナスタが発芽している!!」ではありませんか.もうビックリして大興奮です.あの懐かしいはかなげな姿が2本,スラ~~ッと伸びているのです.イモが出来た時と同様,今シーズンのビッグ・ニュースになる出来事でした.
花芽!?
年が明け2000年となり,順調に生育している青花ナスタ達.3月の半ば,その中の1株に眼が釘付けになりました.いつもよりふくらんだ芽があるのです.もしや花芽?直径1ミリほどで,真っ正面から見ると,ちょうど五角形のような面白い形をしています.他の青花ナスタを観察すると,同じような形の芽はありません.普通,葉芽はかなり小さく直径0.5ミリ程度で,ここまでふくらむまでにはたいがい展開してしまい,こんな具合に見えた事は無かっただけに,ちょっと期待してしまいます.(*^_^*)
咲いた,咲いた,青花ナスタ!
例のふくらみはやはり花芽でした!4/6から開花の兆しを見せていましたが,4/7午後やっと開きました.皆さんの応援のおかげで,長い道のりでしたが念願の花を見る事が出来ました.どうもありがとう!!私はとても幸せです.(*^_^*)
青花ナスタは開花したての頃は濃い紫色ですが,日が経つにつれ,次第に花色は淡くなっていきます.そして数日過ぎた頃からニオイスミレのような甘い香りを漂わせます.下記の開花の様子をご覧下さい.香りをお伝えできないのが残念です.